理事長所信
2026年度 公益社団法人加賀青年会議所
理事長所信
「不完全である勇気」—挑戦を通じて未来を切り拓く—
~はじめに~

第二次世界大戦の終結から70年を迎えた2015年、私は「今の自分を変えなくては」という漠然とした想いを抱き、加賀青年会議所に入会しました。特別な経験や確かな自信があったわけではありません。それでも一歩を踏み出したことで、地域と向き合い、仲間と学び、挑戦を重ねる今の自分へとつながりました。
当時は、安全保障関連法の成立をきっかけに「地域の安全」や「平和の意味」が大きく議論されていた時期でもありました。私にとって加賀青年会議所での11年間は、単に防衛や外的脅威を考えるだけでなく、地域のつながり、人と人との信頼、そして次世代への継承が「地域の安全」を支える土台であることを教えてくれました。そして今、国際情勢の不安定化や世界各地での対立の深刻化は、私たちの暮らしにも影響を及ぼしています。大きな時代の変化の中で、私たちの世代が担うべきは、先人から受け継いだ土台を守りながら、これからの加賀にふさわしい「地域の安全と繁栄」の形を築くことです。安全保障のような国家レベルの課題においても、真に社会を支えているのは、地域に生きる一人ひとりの主体的な意識と行動です。加賀青年会議所は、そうした志と行動力を備えた青年を育みながら、地域と共に歩み続け、「明るい豊かな社会の実現」に向けて、絶えず挑戦してまいります。
基本理念
「創始の志を受け継ぎ未来を切り拓く」
1949年、戦後の混乱が色濃く残る中、「明るい豊かな社会の実現」という理想を掲げ、責任感と情熱に燃える青年たちの手によって、東京青年商工会議所は誕生しました。その後商工会議所法の制定に伴い「青年会議所」へと改称されたこの運動は、やがて全国へと広がりを見せます。ここ加賀の地においても、その志に共鳴した先人たちが立ち上がり、全国で307番目の会員会議所として「加賀青年会議所」が創立されました。豊かな自然と、悠久の歴史に育まれた伝統文化、そして温かな地域の人々。こうした魅力に満ちた加賀のまちで、私たちは地域社会と共に歩み、共に成長してまいりました。この設立の精神は、時代が変わった今もなお、私たちの胸の内に脈々と生き続けています。
しかしながら、今私たちは再び、大きな時代の転換点に直面しています。人口減少、少子高齢化、それに伴う産業構造の変化や雇用への影響、教育環境の変化、そして先行きの見えない国際情勢。こうした複雑で重なり合う課題は、私たちのまち加賀にも着実に影を落としつつあります。こうした時代において、私たち会員に求められているのは、「挑戦する勇気」です。心理学者アルフレッド・アドラーは、「不完全である勇気」を持つことの大切さを説きました。挑戦とは、すべてが整った状態で始めるものではありません。不完全であることを恐れず、一歩を踏み出すことこそが、挑戦の本質です。不安や困難を抱えながらも前に進もうとする意志が、新たな価値を生み出し、地域の未来を切り拓く原動力となります。かつて終戦直後の混迷の中で青年会議所を創り上げた先人たちのように、私たちもまた、この時代を生きる「挑戦者」であり続けなければなりません。完璧を求めるのではなく、不完全であることを受け入れ、それでも行動すること。その姿勢こそが、人を育て、地域を動かし、やがては社会全体の未来をつくっていく力になるのです。私たち加賀青年会議所は、地域の若きリーダーとして、常識や前例にとらわれることなく、柔軟な発想と確かな行動力をもって、新たな時代の課題に果敢に挑んでまいります。
基本方針
加賀青年会議所 中期ビジョン
私たち加賀青年会議所は、創立60周年を迎え、「シン・加賀JC構想 ~カガイッシンを創造せよ~」を掲げました。加賀が抱える多くの課題の根底には、人と人の繋がりの希薄さと地域愛の継承の不足があります。私たちは世代や地域の境界を越え、絆を深め、伝承と継承を繰り返すことで、新たな加賀の未来を切り拓きます。そのために三つの「イッシン」を行動計画として推進します。
「一新」歴史と最先端技術・情報を融合し、革新的な加賀の発展を目指す。
「一進」境界を越え挑戦する人財を育成し、地域の未来を創造する。
「一心」すべての世代と地域が一つとなり、加賀への想いを深める。
この構想と行動をもって、ワクワクあふれる持続可能な加賀の実現に挑んでまいります。
「地域に根ざし、世界を見据えたまちづくり運動の推進」
まちづくり委員会
急速なデジタル化とグローバル化により社会は大きく変化していますが、地域社会における「人と人とのつながり」や「顔の見える関係性」は今も変わらず重要な基盤であり続けています。特に加賀では四季折々の祭礼や地域活動が人々の絆を育んできましたが、人口減少に伴い担い手不足が進み、伝統文化の継承や共助体制の弱まりが課題となっています。
こうした状況の中で求められるのは、世代や立場を超えて顔が見える関係を築き、日常から自然に支え合えるコミュニティの強化です。内閣府の防災白書(令和6年)の調査によれば、災害時には行政の支援と並び、近隣住民の助け合いが地域を支える大きな力となったことが示されています。これは防災だけでなく、日常生活にも共通する教訓です。まちづくり委員会では、こうした「共助の力」を育むため、地域の多様な人々が交流し学び合える機会を創出します。世代を超えた対話や体験の場を通じて、互いを理解し、助け合える仕組みを築くことで、誰もが安心して暮らせる加賀を目指してまいります。
また、国際社会の知恵や経験を取り入れ、地域の文化や人の絆と結びつけた新しいまちづくりを実践します。伝統を尊重しつつ多様な価値観を受け入れ、共助の精神を軸に持続可能な地域社会を築くことが、加賀を内側から強くし、未来へとつなぐ道だと信じます。
■まちづくり委員会
設置目的:世代や立場を超えた交流を通じて「共助の力」を強化し、持続可能な地域の基盤を築く。職務分掌
1.新たなまちづくりの潮流を学び、共助を行動に結びつける定例会アワーの実施
2.共助の精神を活かし、地域の担い手不足解決に寄与するまちづくり事業の実施
「次世代を担うひとづくり運動の実施」
ひとづくり委員会
急速に変化する社会環境の中で、次世代を担う子どもたちの育成は、地域の未来を左右する最重要課題です。AIやデジタル技術の進化、国際情勢の不安定化、人口減少や少子化による教育環境の変化は、地域社会にも大きな影響を及ぼしています。経済産業省「未来人材ビジョン」が示すように、これからの時代に求められるのは、知識の詰め込みではなく「変化を恐れず挑戦し、協働して課題を解決する力」です。
その力の源となるのが「探究心」です。探究心は、未知への興味を行動に変え、課題を発見し、解決へと導く原動力です。探究心を持つ子どもたちは、自ら学び続ける力を育み、やがて地域の課題や可能性に気づき、未来を切り拓く担い手へと成長します。
私たちは、保護者と共に学び合い、家庭が子どもの探究心を伸ばし、挑戦を支える方法を共有してまいります。さらに、地域資源や多様な人との交流を通じて、子どもたちが自ら課題解決に挑む機会を創出してまいります。こうした活動を積み重ねることで、探究心あふれる若者が加賀の未来を創造し、持続可能な地域社会を築く礎となることを目指してまいります。
■ひとづくり委員会
設置目的:次世代を担う子どもの探究心と課題解決力を育み、地域の未来を創造する人財を輩出する。
職務分掌
1.保護者が子どもの挑戦を支援するために、意識と知識を高める定例会アワーの実施
2.地域資源や多様な人との交流を通じ、子どもが自ら課題に挑戦できる探究型体験学習の実施
「地域を変える起点となるリーダーシップの開発」
会員開発委員会
私たち加賀青年会議所の会員のうち、入会3年未満の会員が全体の約7割を占めています。これは組織として大きな可能性を秘める一方で、成長の機会と組織の方向性を確かに示していく責任があることを意味しています。私たち会員のあるべき理想像は、周囲からの強い信頼を受け止め、安心をもたらす存在であり、その姿が地域の希望となることです。リーダーシップとは、必ずしも特別なカリスマ性を持つ人や、先頭に立って強く引っ張る人だけに求められるものではありません。仲間と共に目標に向け、前向きな姿勢や言葉で周囲に良い影響を与えることもリーダーシップです。だからこそ、誰もがその力を発揮できるのです。本委員会では、会員一人ひとりの成長を支援し、挑戦と自己研鑽の機会を提供することで、地域を変える起点となるリーダーを育成し、加賀の未来をより力強いものへと切り拓いてまいります。
また本委員会は、会員拡大も担います。単なる人数の増加ではなく、「この組織に加わりたい」と自然に人が集まってくる魅力ある加賀青年会議所を目指してまいります。そのためには、活動の目的や「加賀の未来を良くしたい」という想いが行動に表れ、地域から共感されることが必要です。私たちはリーダーとしての在り方を体現し、共感の輪を広げてまいります。これらの取り組みにより、持続可能な組織を確立し、地域を変える運動を力強く展開してまいります。加賀の未来を創るのは、私たち自身です。
■会員開発委員会
設置目的:会員一人ひとりがリーダーとしての資質を磨き、地域変革の起点となる人財を育成する。
職務分掌
1.信頼を集めるリーダー像を学び、実践力を高める研修事業の実施
2.組織全体の活性化につながる会員拡大・交流事業の実施
「絆を育み、未来へつなぐJC運動の推進」
加賀絆育成委員会
地域社会において、世代や立場を超えた「絆」の力は、未来を担う子どもたちの健やかな成長と、持続可能なまちづくりにおいて重要な基盤となります。加賀絆育成委員会では、郷土愛を育むことや伝統と礼節を学び、体験できる機会を創出し、地域への誇りと愛着を育むとともに、地域内外の多様な団体と連携し、共に学び・共に行動する運動を展開してまいります。
また、公益社団法人として地域に必要とされ、より大きく貢献していくためには、行政機関や地域団体、教育機関、経済団体などとの連携・協働が不可欠です。まずは地域に存在する団体の概要や活動内容を把握し、顔合わせや情報交換を通じて相互理解を深めます。次に、団体の主催事業や地域行事に参加し、協力の姿勢を示すことで信頼関係を築いてまいります。そのうえで、加賀絆育成委員会として全委員会活動や地域貢献につながる連絡調整を進め、外部の協力者を意識した活動と諸団体への積極的な支援を通じて、持続的な協働体制を目指してまいります。
■加賀絆育成委員会
設置目的:郷土愛と礼節を次世代に継承し、地域内外のつながりを広げることで、持続可能な地域文化を守り育てる。
職務分掌
1.加賀郷土かるた取り大会を通じて、郷土愛を育む事業の実施
2.わんぱく相撲大会を通じて、伝統と礼節を学ぶ事業の実施
3.市や諸団体が主催する地域事業への参画や協働による連携強化の推進及び連絡調整
「誠実な財務と有意義な定例会運営の実施」
財務・例会委員会
青年会議所には、「プロトコル」と呼ばれる決まり事が存在し、JAYCEEとして守るべき行動規範や流儀・作法が定められています。セレモニーや服装といった形式にとどまらず、各役職の責務に関する組織論や精神論にまで及ぶこれらの規律は、私たちの品格を示す根幹となっています。しかし、形式を完璧に遂行すること自体が目的ではありません。本当に大切なのはその土台の上で学びを得て、仲間と成長し、地域に還元していく実質的な成果です。
また、組織が挑戦し続けるためには、財務処理の正確さや会費の適正な運用、透明性の高い予算管理といった下支えが欠かせません。これらは華やかさこそありませんが、組織の信頼を支える基盤です。私たちは形式を重んじながらも実質である学びを追求し、その両立を実現するために財務と定例会運営の両面から組織を支えていきます。舞台裏の準備と下支えを徹底することで、会員一人ひとりが安心して活動に集中できる環境を整えます。
また、本委員会では「卒業式」を担当します。卒業式は、卒業する会員がこれまでの歩みを振り返り、仲間へ感謝とエールを贈るとともに、在籍する会員がその想いを受け取り、自身のこれからの活動や成長を見つめ直す大切な機会です。これらを通じて、互いに次の活動への意欲を高めてまいります。
■財務・例会委員会
設置目的:透明性の高い財務運営と有意義な定例会を通じて、組織の信頼基盤を確立する。
職務分掌
1.プロトコルを重んじた有意義な定例会の運営
2.各委員会事業の予算・決算審査、およびコンプライアンス指導の実施
3.卒業式の実施
「未来へつなぐ組織運営の実現」
事務局
会員の皆さんの中には、現在のJCに魅力を感じておられる方もいれば、そう感じにくくなっている方もいらっしゃるかもしれません。また、魅力を感じていても、さらに良くなってほしいという思いや、変化を望む声も伺っています。私たち会員はそれぞれ、家族を大切にし、会社を成長させながら、地域を良くしていこうとしています。これらすべてのバランスを追求することは、個々の価値観の違いもある中で決して簡単なことではありません。だからこそ、私たちはJCという組織を、「無理を強いる場」ではなく、「共に成長し、共に調和を模索できる場」として築いていきたいと考えています。会員一人ひとりの立場や事情を尊重し、無理なく関われる仕組みや環境を整えることで、未来へつなぐ組織運営を目指してまいります。
また、「新年交流会」では、本年度の所信を発信し、私たち加賀青年会議所に於いては、同じ目的に向かい一年間共に運動を展開するために、一人ひとりの行動指針を定める機会にしてまいります。
■事務局
設置目的:会員が無理なく関われる環境を整え、組織全体の調和と成長を支える。
職務分掌
1.加賀青年会議所の所信を発信する事業の実施
2.各委員会との連絡調整と情報発信の円滑化
3.理事会、正副会議の運営及び議案上程システムの最適化
4.ホームページ、各種SNSの管理・運営
■副理事長
挑戦と変革をリードする存在として、組織全体の調整と推進に努めていただきたい。多様なメンバーの声を丁寧に聴き、各委員会や事業の連携を強化し、加賀青年会議所の一体感を高めて下さい。特に新入会員の成長支援や会員の定着を重視し、一人ひとりがリーダーシップを発揮できる環境づくりに注力していただきたい。変化の時代においても柔軟かつ迅速な意思決定を支え、理事長と共に組織の未来を切り拓いていただきたい。
■専務理事
組織運営の中心を担う立場として、会員一人ひとりの立場や事情を尊重し、無理なく関われる仕組みや環境を考え、未来へつなぐ組織運営を目指していただきたい。また、事務局を統括し、組織全体を支える存在であっていただきたい。
■財政特別理事
誠実さと透明性のある財務運営を基本に据え、加賀青年会議所の財政基盤の安定に努めて下さい。予算編成や支出管理においては効率性と費用対効果を重視し、信頼される組織であり続けるために、公正な運営を心がけていただきたい。
また、財務管理および予算執行を的確に行い、各委員会の財務面をサポートして下さい。
あわせて財務・例会委員会を統括し、定例会の円滑な運営と品格ある場づくりを支えることで、組織全体の信頼基盤をより一層確かなものにしていただきたい。
■室長
委員会および委員長を支える立場として、委員会運営の円滑化に尽力して下さい。また、委員長の想いや構想を正確に理解し、実行に移すためのサポート役として、組織全体の連携と調和役を担っていただきたい。陰から支える存在として職務を遂行し、加賀青年会議所の活動基盤を確かなものにしていただきたい。
~結びに~
これまで、青年会議所を辞めようと思ったことは一度や二度ではない。
結婚、家族の誕生、会社の株式譲渡など環境が大きく変わる中、自分の進むべき道に迷うこともあった。
しかし、これまでの人生を振り返り「本気で何かに全力を尽くしたことがあっただろうか」と自問した時、答えは「ない」だった。
このまま終わりたくない。
周りのために、家族のために、そして何より、自分自身のために一花咲かせたい。
そう強く願ったとき、初めて「地域を良くしたい」と心から思えた。
この想いを胸に、私は仲間と共に挑み続けます。
未来を担う子どもたちが誇れる加賀をつくるために。
そして、私たち自身が誇れる人生を歩むために——。
公益社団法人加賀青年会議所 第62代理事長 岡田 洋介